こんにちは。森のどうぶつクリニック、院長の森です。
2月22日ということで、ニャンニャンニャン、猫の日ですね。ぜひ、特別なごはんやグッズで楽しんでください。我が家にも一時期3匹の猫がいましたが、うち1匹に普段与えないお肉をあげたら、翌日嘔吐がひどかったのであげすぎには注意してくださいね。お恥ずかしいですが、獣医師でも自宅ではこういうことをしてしまいます。また、猫ちゃんだけというのもずるいので、わんちゃんのお家楽しんでくださいね。
さて、以前血尿や頻尿のおしっこトラブルは膀胱炎が多いですよとお話しましたが、今回は特に治療が難しい猫ちゃんの「特発性(とくはつせい)膀胱炎」に焦点を当ててお話したいと思います。
特発性?とくはつせい??
そもそも特発性って何?って思われるかと思いますが、「原因がわからない」という意味です。特発性膀胱炎は猫ちゃんの膀胱炎で1番多いとされています。こちらを読んでいる方の中には過去に血尿や頻尿などでこの病気と診断された経験もあるかもしれません。その際に、「細菌も石(結石)もないので原因不明の特発性ですね。」と言われて、血尿や頻尿で苦しがっている猫ちゃんがいるのに原因不明?とモヤっとされた方もいらっしゃるのではないかと思いますが、先生も正確な情報をお伝えしているんですよね。
主な症状
猫ちゃんがこんなサインを出していたら、膀胱が悲鳴を上げているかもしれません。
・血尿:おしっこが赤かったり、ピンク色になる。
・頻尿:何度もトイレに行くが、少ししか出ない。
・不適切な排尿:普段しないトイレ以外の場所でしてしまう。
・排尿痛:おしっこをしている最中に鳴く。
・過剰なグルーミング:下腹部や陰部を執拗に舐める。
重要 おしっこが全く出ていない時は緊急事態です!!
男の子の場合、尿道栓子と呼ばれる炎症のゴミのようなものが尿道に詰まり尿道閉塞を起こす危険性があります。尿道閉塞を様子見てしまうと腎臓に影響を与え最悪死亡する可能性があります。おしっこが全く出ていないと感じた時はすぐに受診してください!
なぜ起きるのか?
原因不明とされていますが、ストレス、濃いおしっこ(飲水量の不足)、肥満や運動不足などが1つもしくは複数絡み合って発症すると考えられており、その中でも現在はストレスに注目が集まっています。
診断方法は?
特発性膀胱炎の診断は、その他の病気、「結石や、細菌感染、膀胱腫瘍ではない」を確認することで診断します。
・尿検査:特発性膀胱炎では血尿の原因である赤血球のみ見られることが多いです。ストルバイト結晶と呼ばれるものが出ることがありますが、これは炎症の結果であり、膀胱炎を起こす原因ではありません。
・超音波検査:膀胱結石や膀胱腫瘤が無いことを確認します。
・その他:診断というより猫ちゃんの状況に応じてレントゲン検査や血液検査を行う場合があります。
治療方法は?
冒頭治療が難しいとお話しましたが、症状自体は1週間程度でおさまることがほとんどです。この病気の厄介なところは再発がとても多いところにあります。再発の頻度はその子によって様々ですが、多い子になると1ヵ月の間に再発することもあります。したがって、発症当初は点滴や痛み止めのお薬を使用して経過をみますが、その後の再発防止の対処がとても重要になります。ただどうしても再発してしまう子もいるので、その場合は発症時の重症度を低下させること、再発間隔を延長させることが目標となります。
<ストレスへの対処>
まずストレスへの対処ですが、猫ちゃんがどのような事にストレスを感じているかご存知でしょうか?
・同居動物との関係性
・同居動物の入院、死亡
・家族の増えた、あるいは家を出られた
・家族のお仕事等の生活スタイルが変わった
・家の近くで工事が始まった
・窓から他の猫が見かけるようになった
・トイレが気に入らない
この他にも猫ちゃんによって様々な事柄にストレスを感じています。そのすべてに対応することはできないかもしれませんが、ストレスへの対処をいくつかご紹介します。
・遊びの時間を増やす
元々猫ちゃんは遊びが好きな動物です。狩猟本能をくすぐるような遊びが良いでしょう。
例えば、追いかけて捕まえたり、あるいはジャンプを促すようなおもちゃ、ドライフードを投げて、それを追いかけて食べさせる遊びも効果的です。
留守番の時間が多い場合は、R-1などの小さなボトルに穴をあけて、その中にドライフードを入れておいて、コロコロ転がすと穴からフードが出てくる遊びも好んでくれる子がいます。小さなボトルではなく、トイレットペーパーの芯を工作して使われているご家庭もありました。また、猫ちゃんは家の中をパトロールしますので、フードを隠しておいて猫ちゃんに探させる遊びも良いかと思います。隠した場所を忘れないでくださいね。
・トイレの対処
猫ちゃんはトイレにこだわりを持っている子が多いと言われています。もし、以下の行動が見られた場合ストレスを感じているかもしれません。
・側面、壁、ゆかをひっかく
・側面に足が2本以上乗っている
・排泄中、側面に足を置いている、もしくは足を上げている
・排泄前に砂を掘らない
・排泄したらすぐに出ていく
・排泄物を隠そうとしない
・近づくが使用せず立ち去る
すべてがストレスによるものではないかもしれませんが、よく言われている行動になります。もしこれらの行動が見られ、膀胱炎を再発しているのであればできる対処をしてみましょう。
一般的にどのようなトイレを好むかという研究されています。
・大きさ:体長の1.5倍くらい(大きい子は衣装ケースを利用されている方も)
・砂の量:砂を掘っても底が見えないくらいたっぷりと
・トイレの数:猫の数+1個かそれ以上
・トイレのカバー:無い方が好ましい
・トイレの場所:いろんな場所、静かな場所、真っ暗にならない場所
・トイレの砂:その子の好みを調べる(一般的に鉱物系を好むとは言われています)
・掃除:定期的に行う(理想は毎日掃除、1ヵ月に1回はトイレ自体を洗浄)
これらすべてに対応することは難しいと思いますので、できるところから始めてみましょう。トイレの砂については、タイプの違う砂を用意し、どちらの方が回数が多いか、滞在時間が長いかなどで調べることを提案しています。
・プライベート空間の確保
誰にも邪魔されない「落ち着ける場所」や「隠れ家」を確保する。
・ストレスに配慮したフードやサプリメントなどの使用
ストレスケア成分が配合されたフードやサプリメント、また、フェリウェイという製品がよく使われます。続けやすいものを使用していきましょう。
<飲水の工夫>
・新鮮なお水を綺麗な容器で準備する、容器を複数用意する、お湯を好む子はこまめにかえる、噴水式容器を試す
・ドライフードのみの子は、ウェットフードを加える
猫ちゃんのおしっこは人に比べると非常に濃いです。その濃い尿が膀胱粘膜を刺激することで膀胱炎を起こすと言われています。そのため、おしっこを薄くする、つまりは水分摂取を増やすことが好ましいです。お水の容器、温度にこだわりのある子もいて、例えば我が家では、温かいお湯、お風呂の手桶を好んでいます。
噴水式の給水器については多くの子で飲水量が増えたというデータもあるので1度試してみるのも良いかと思います。また、飲水量を増やすことは腎臓にも配慮することになるので、水分摂取を増やす取り組みはできるだけ行うことが勧められます。
<どうしても再発が多い場合>
本当にいろいろと対処していただいているのに再発を繰り返してしまう子もいます。その際に利用を検討するのが、アミトリプチリンというお薬です。人の方では抗うつ薬として使われるようですが、猫ちゃんの場合、鎮痛補助薬、尿管結石に対する尿管弛緩を目的に利用されています。特発性膀胱炎に対しても研究をされていますが、7日間と短期間の場合はあまり効果はないものの、長期間使用することで6カ月以内に約70%の子で症状が消失したという報告があります。
私自身では、このお薬を検討するほど重症な子は多くないので使用経験はあまりありませんが、実際に短期間で何回も再発した子に関しては良好な経過を辿ることができました。その他の対処をしてもなかなかおさまらない場合は選択肢の1つであると考えています。
さいごに
今回は猫ちゃんの特発性膀胱炎についてお話をしました。よく見る機会のある病気ですが、原因がはっきりしておらず、対処が多岐にわたるため長文になってしまいました。今回は一般的なことをお話をしましたが、この病気の原因がその子によって様々なので今回載せた以外の対処も必要となることもあり、大変治療が難しくなることもあります。
その際に飼い主様がご自身を責められる方もいらっしゃいますが、そのように感じる方はしっかり対処をされていますので、そのような事は思わないでいただきたいです。もちろん猫ちゃんが悪いということもありません。対処や治療の進め方にはさまざまな方法がありますので、特発性膀胱炎で困っている方がいらっしゃいましたら、ぜひご相談ください。
猫の日を猫ちゃんのご家庭も、わんちゃんのご家庭も楽しんでお過ごしください。
森 孝昌
西葛西の動物病院 森のどうぶつクリニック
