お問い合わせはこちら

診療時間
09:00〜12:00××
16:00〜19:00×××

受付時間:午前09:00~11:30/午後16:00~18:30
休診日:毎週水曜日、祝日、日曜午後休診

〒134-0088 東京都江戸川区西葛西6丁目19-12 サンライズ西葛西101

森のどうぶつクリニック

お知らせ

犬アトピー性皮膚炎~皮膚科治療の考え方~

こんにちは。西葛西の森のどうぶつクリニック、院長の森です。最近毎回「徐々に暖かくなってきましたね」、と言っていますが、まだ少し早いですが暖かくなってくると皮膚病で受診するワンちゃんが増えてきます。今回は犬アトピー性皮膚炎に焦点を当ててお話したいと思います。犬アトピー性皮膚炎は完治が難しいため、生涯に渡り付き合っていく病気です。まずかゆみを抑えるのが大切ですが、症状が落ち着いた後に、いかに長くかゆみの少ない快適な時間を過ごせるかということが非常に重要となります。今回は犬アトピー性皮膚炎を例としますが、その他にも生涯に渡るケアが必要な体質が関わった皮膚病はあります。病気により治療法は違いますが、継続的な治療の重要性を最後に書いていますので、お時間がない方は「治療」のところだけでも読んでください。

1.犬アトピー性皮膚炎のサイン(症状)とは

①繰り返す強いかゆみ
「皮膚炎」の症状は、「赤くて、かゆい」です。フケも時間が経ち細菌感染を起こすと出ることもありますが、あくまで2次的な症状です。足先を舐める/かじる、脇や腹部を引っかく、顔をこすりつけるといった動作が目立ちます。

②症状が出やすい場所
足先、耳、内股、腹部、脇、口や目の周りに症状が出やすいです。
最初は体には症状は現れず、耳(外耳炎)から始まる子もいます。

③若齢での発症
多くの場合、6カ月齢~3歳ごろまでに初めて症状が現れます。「いつからかゆみが見られるようになったか」、も非常に大事なことなので、記録を残しておくのも良いですね。

④季節性がある
最初は夏頃に発症することが多いです。しかし、犬アトピー性皮膚炎の場合、年々悪化する傾向が見られ季節に関係なく症状がみられることがあります。

⑤かゆみ止め(抗炎症薬)がよく効く
犬アトピー性皮膚炎はかゆみ止めがすごく効きます。最初はかゆみ止めで改善したらしばらく症状は治まりますが、年々病気が強くなってくると再発の間隔が短くなるため、かゆみが落ち着いている時に他の治療をしておくのが重要です。

2.犬アトピー性皮膚炎の原因

①遺伝的要因

②皮膚バリア機能の低下

③免疫システムの異常

④その他

犬アトピー性皮膚炎の原因は「ハウスダスト(ダニ)に対するアレルギー」だけではなく、様々な要因が絡み合って生じているという考え方が主流になっています。

①遺伝的要因
柴犬、フレンチブルドッグ、ウェスティー、ラブラドールレトリーバー、ゴールデンレトリーバー、シーズー、コッカースパニエルなどは、遺伝的にアトピーを発症しやすい家系があることが知られています。これらの発症しやすい家系には、皮膚の構造を作るタンパク質や、免疫反応を制御する遺伝子に、生まれつき変異や欠損があることが分かってきています。

②皮膚バリア機能の低下
健康な皮膚は、肌(角質層)が「バリア」として機能し外界からの刺激を防いでいます。アトピー性皮膚炎の子はバリア機能が脆くなっています。肌はレンガの壁のようになっており、レンガが角質細胞レンガ同士を接着するモルタルが細胞間脂質です。細胞間脂質で有名なのがセラミドですが、アトピー性皮膚炎の子はセラミドの量が少ないもしくは質が悪く、壁に隙間があいているような状態になります。その結果、ハウスダスト(ダニ)などのアレルゲンの侵入を許すことで以下の「免疫の異常」を引き起こすことになります。

③免疫システムの異常
皮膚から侵入してきたアレルゲンに対して、免疫系が「過剰に」反応してしまう状態です。人では花粉症が想像しやすいですが、特に悪さをするわけではない、花粉やハウスダスト(ダニ)に過剰に反応して、皮膚炎を起こしてしまいます。

④その他
・皮膚やお腹の常在菌の異常:通常皮膚には多種多様な細菌が存在しています。しかし、犬アトピー性皮膚炎の子は常在菌の多様性がなく、また、ブドウ球菌が多いとされています。ブドウ球菌は皮膚感染症である膿皮症の主な原因菌なので膿皮症にもよく併発します。またお腹(腸内)の細菌も同様に多様性が無いとされています。

・かゆみの神経:かゆみを感じる神経は通常皮膚の深いところにありますが、犬アトピー性皮膚炎の子の場合、その神経が浅いところまで伸びてきており、かゆみを感じやすくなっていると言われています。

3.犬アトピー性皮膚炎の診断

①情報収集
その子の情報(犬種や年齢、体のどこをかゆがっているか)、病歴治療歴をお伺いし、「アトピーっぽい」かどうかを考えます。

②診断基準
犬アトピー性皮膚炎には診断基準が存在し、それを参考にして診断を進めます。この過程は「他の病気ではない」という除外診断が多く、例えば、ノミなどの寄生虫ではない、カビや細菌感染症でなはいということを皮膚検査で調べていきます。

③アレルギー検査
この検査は必須ではありません。これまでの生活環境・食事・病歴などによって飼い主様と実施するか決めていきます。主にアトピーで見られるアレルゲンが入るとすぐに症状が出る即時型アレルギーの検査である、「病原性IgE(アイジーイー)検査」と、主に食物アレルギーでみられるアレルゲンを摂取して時間が経ってから症状が出る遅延型アレルギーの検査である、「リンパ球反応検査」を状況に合わせて実施します。

3.治療:リアクティブ療法とプロアクティブ療法

前置きがながくなりましたが、本題です。犬アトピー性皮膚炎に特効薬はありません。かゆみを抑えるお薬については、他の科に比べると新しいお薬が次々と出ています。しかし、様々な原因が重なり、しかも、その子によって原因が異なるため、1つのお薬だけで治療することは難しく、その子に合った治療を見つけていかなくてはなりません。
犬アトピー性皮膚炎の治療は、「かゆみを落ち着かせる」治療と「再発させにくくする」治療に大きく分かれます。

①リアクティブ療法~とにかくまずはかゆみを止める、止まった後すぐやめない~

急に横文字が出てきて恐縮ですが、直ちにかゆみを抑える治療を、リアクティブ療法といいます。犬アトピー性皮膚炎は非常にかゆいです。重症な子だと食欲が落ちて、体重が減ってくる場合もあります。また、飼い主様の方も、かゆがる姿を見たり、夜就寝中に引っ搔く音で起きてしまったりと、疲れ切ってしまうこともあります。そのため、すぐにかゆみを止める必要があります。以前はかゆみ止めの主役はステロイド剤のみでしたが、副作用の観点から長期的な使用は難しいところがありました。しかし、現在では分子標的薬抗体製剤といった新しいお薬が出てきたため、安全に長く治療することが可能となりました。

・ステロイド剤:非常に効果の高いお薬ですが、長期的な使用には向きません。かゆみが落ち着いた後に、頓服や外用薬で利用することがあります。

・分子標的薬:炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)が細胞の受容体にくっつくと、細胞内に「炎症を起こしなさい」という伝達が生じ、炎症が起こり、かゆみが出ます。分子標的薬はその伝達を邪魔することで炎症を抑え、結果かゆみも抑える効果があります。
製品としてはアポキルゼンレリアがあります。

・抗体製剤:犬アトピー性皮膚炎で重要な炎症性サイトカインの1つの働きを妨げることで炎症をおさえます。1つの物質にターゲットを絞っているため副作用がすくないこと、月1回の注射で良いことが特徴です。製品名はサイトポイントです。

通常1週間程度でかゆみは落ち着きます。しかしそこですぐに休薬してはいけません。一見すると赤み落ち着いて治ったように見えますが、実は皮膚の奥では炎症が続いています。そのためすぐに休薬するとしばらくすると再発してしまいます。当院では最低でも1~2ヵ月はしっかりと炎症を抑える治療を行います。お薬の選択はご相談によって決めていきます。

②プロアクティブ療法~再発をさせない、再発しても軽症に~

赤み(炎症)やかゆみがしっかりとおさまった後に、次は再発をさせないような治療をしていきます。これをプロアクティブ療法といいます。犬アトピー性皮膚炎を引き起こす原因はさまざまであるため、その子に合ったものを使用していきます。以下のお薬やケア用品のどの組み合わせが一番良いか、時間をかけて見つけていきます。

・ステロイド剤:ステロイド内服薬を頓服で使用したり、症状が局所的に残る・出やすい場合は外用薬を使用します。

・抗体製剤:1(~2)ヵ月に1回の注射ですむのでお薬が苦手な子にはとても使いやすく、また、副作用も少ないのが利点です。

・免疫抑制剤:シクロスポリンというお薬を使用します。

・保湿剤:保湿は皮膚のバリア機能を保つ上で非常に重要な役割を担っています。アトピーの子は元々皮膚のバリア機能が低下し、病気の発症に繋がるので、どの子にもすすめています。保湿剤はスポットタイプ、スプレータイプ、泡タイプ、入浴剤ワイプ剤といったいろいろな種類のものがあるので、続けやすいものを選んでもらっています。

入浴もしくはシャンプー:細菌やマラセチア(カビの仲間)が増えやすい子、べたべた肌(あぶら症)の体質の子などシャンプーが必要な子はいますが、どんなに肌に優しいシャンプーでも一時的にバリア機能は落ちてしまいます。したがって、シャンプーは最低限にし、入浴により汚れを落とす方が良い子もいます。その際に上記の入浴剤を使用することもできます(シャンプー後でも可)。

・腸活:犬アトピー性皮膚炎の子は皮膚やお腹の菌の多様性がないとされています。腸内細菌のバランスが悪いと、皮膚へ悪影響を及ぼすと考えられています。そのため、腸内細菌のバランスを整えるのようなサプリメントを使用しています。

・フード:アトピー性皮膚炎のための療法食や、食物がアレルゲンと考えられる場合は、アレルギー用の食事に切り替えることがあります。

・サプリメント:炎症を抑えたり、皮膚・被毛の栄養になるようなサプリメントがあります。

さいごに

犬アトピー性皮膚炎は生涯治療が必要になる病気で、特効薬は無く、どの治療が合うかその子によって変わってきます。発症直後の強いかゆみに対して新しいお薬も開発され、効果的に治すことができるようになりました。しかし、かゆみが治まってすぐにやめてしまうと、再発してしまい、またわんちゃんは辛い思いをしてしまいます。いかに、かゆくない時間を長く作るかが重要です。そのためにはかゆくない時期に治療を続ける必要があります。続けるのはすごく大変だと思いますので、その子にあって、かつ、続けられる治療をご相談できればと思います。
できるだけかゆい時間を少なくしてあげたいと思われましたら、ぜひ1度ご相談ください。