みなさん、こんにちは。西葛西の森のどうぶつクリニック、院長の森です。症例紹介のページを作ったのにもかかわらず更新してきませんでしたが、少しずつ増やしていきたいと思います。
〇毛包上皮腫とは
毛包上皮腫は毛包(毛穴)由来の良性腫瘍で、とくに犬では頻繁に認められます。腫瘍細胞はどんどん根を張って広がっていくような浸潤性(しんじゅんせい)は認めず、嚢胞状の構造を形成していきます。その嚢胞にはフケなどの角化物を含むことが多く、「動物病院で切開してアブラを出してもらった」経験があるお家はもしかすると毛包上皮腫だったかもしれません。
これに対し「悪性毛包上皮腫」の腫瘍細胞は浸潤性に増殖するため、まれですが、リンパ節への転移や手術後の再発の可能性があります。
〇当院の症例
・ビーグル 8歳 去勢済雄
・左前足の足先にあるできものが大きくなってきた
<身体診察>
・左前足の掌球(1番大きな肉球)の近くに大きさ約4cmの腫瘤が“親指”を巻き込むように存在

<細胞診>
・上皮系細胞が多数採取された
<治療計画>
上皮系細胞腫瘍が疑われ、肺など他臓器への転移が無いので治療は外科手術が選択肢となります。今回の手術では足先に大きな腫瘍が存在したため、腫瘍を取り除いた後の皮膚の欠損部分を閉じることができない可能性がありました。そのため手術前に、縫合が不可能な場合、傷を開きっぱなし(開放創)にして、徐々に皮膚の治癒を狙う方法(2期癒合)をご提案しました。なお、親指も腫瘤に巻き込まれていたので断指術も計画しました。
<手術>
完全な閉鎖が困難でしたので、予定通り開放創にして手術を終了しました。手術直後は左前足をあげていましたが、翌日には歩行時も着地していました。開放創にしているため、治癒するまで消毒と包帯をお願いしました。この消毒と包帯は自宅でもできる簡単なものです。
・術後12日目
とてもきれいな肉芽組織が傷口を覆っていました。きれいな肉芽組織が出来上がればそれを土台に皮膚が傷口を覆っていき治癒します。お散歩も問題なく行くことができます。

・術後29日目
飼い主様のご都合により日があきましたが、完全に治癒していました。お聞きすると1週間前くらい(術後22日頃)には治癒していたとのことです。発毛しない可能性もありますがこの場所であれば目立たないかもしれません。今後は念のために再発がないか注意が必要です。

<本症例のポイント>
・縫合が難しい場合でも治癒の方法を変えることで腫瘍切除が可能になる
手術の傷は縫合により治癒させた方が早く、綺麗に治りますので、通常は当院でも大きな腫瘍を取る場合、皮弁という方法などを使いながら、できる限り縫合できるようにします。しかし今回のように縫合が難しい場合、腫瘍を取ることを諦めるのではなく、開放創にして術後管理するだけで腫瘍を切除できる可能性があります。ただし、場所によってはこの方法が難しい、傷の治癒を邪魔するような他の病気があるなど、今回のような治療ができない場合もありますが、ご興味がある方は1度ご相談ください。
西葛西の動物病院
森のどうぶつクリニック
