こんにちは。西葛西の森のどうぶつクリニック、院長の森です。ワンちゃんは春になると狂犬病、フィラリアに、ノミ・マダニと予防シーズンが始まりますが、おそらく猫ちゃんでは一般的ではないかと思います。しかし、猫ちゃんのフィラリア・マダニ予防はワンちゃんと同じくらい重要です。そこで猫ちゃんでの予防が少ない現状を変えたいと思い「猫ちゃんの予防のすすめ」としてまとめました。
なぜ猫ちゃんも予防が重要なのか
フィラリア予防も、マダニ予防もワンちゃんの予防であると思われている方は少なくないかと思います。では、どうして猫ちゃんでもこれらの予防が大事なのか。それは、フィラリア症ではワンちゃんよりも症状が急性で重篤であり、またマダニが媒介するウイルスによる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は猫ちゃんでの死亡率が非常に高く、そして、猫→人への感染が報告されているからです。その中には、動物病院スタッフの感染報告も含まれています。
感染経路については、フィラリア症は蚊が関係するので外に出ない猫ちゃんでも感染する可能性はあります。また、マダニに関してはお外に出る子は予防が重要ですが、お外に出ない猫ちゃんでも感染報告があがっています。これは、同居のワンちゃんや人がマダニをつけてしまい、そこから感染したのではないかと考えられています。
猫フィラリア症
・第1期:咳、呼吸困難
・第2期:呼吸困難、血栓塞栓症、突然死
・慢性期:努力性呼吸
猫フィラリア症については以前にもブログにあげましたが、急性の呼吸器障害が特徴的な病気です。最初発症し(第1期)、治療により症状が緩和した後、再び重篤な症状が発症します(第2期)。特に第2期では突然死が言われており非常に怖い病気です。
そして、第2期も乗り越えたとしても、その時には2回の肺障害を経験しているため、肺はボロボロになっていると言われています。肺の働きは酸素と二酸化炭素の交換ですが、2回の障害により、肺の機能が低下し、常に苦しそうな呼吸が見られるようになります。レントゲン写真では肺は膨張し、とても頑張って呼吸をしている印象の写真が撮れます。
2回にわたって重篤な症状が見られ、場合によっては亡くなってしまう危険性もあり、なんとか乗り越えても肺の機能が落ちてしまうというとても怖い病気です。
マダニが媒介する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」
マダニが媒介する病気は様々ありますが、今日とても注目されている病気がSFTSです。この病気は犬猫もですが、人も発症する病気です。
・SFTSウイルスによる感染症
・マダニが吸血時にウイルスが体内に侵入
・症状:発熱、嘔吐、黄疸(おうだん)、意識レベル低下(ぐったり) など
・血液検査:血小板減少、白血球減少、高ビリルビン血症(黄疸)、炎症の数値の上昇、肝臓の数値の上昇 など
・治療:対症療法のみ
・予後(経過):猫の死亡率は60%。回復する子では1週間程度で回復するが、少なくとも1カ月はウイルスを排泄
この病気はマダニに潜むウイルスが吸血時に体内に侵入して発症するウイルス感染症です。猫ちゃんでの症状は重篤で、死亡率が非常に高い病気です。(ワンちゃんの死亡率は約40%ですが症状を示さない場合も多いとされます。人はご高齢の方の発症が多く、死亡率は約10%です。)感染動物の血液、体液、嘔吐物、排せつ物にウイルスが含まれているため、それらを介して人も感染します。特に血液による伝搬が問題で、獣医師や動物看護師への感染が報告されています。
治療としては、動物において効果のある抗ウイルス薬はないので、点滴などを行い回復を待つしかありません。回復する子は1週間程度で元気や食欲が戻りますが、ウイルスの排せつが1ヵ月は続き、ご家族への感染が懸念されるため、少なくとも1カ月間は入院となります。1カ月間の長期的な入院に加え、入院中は病院スタッフが感染しないように、手袋・マスク・ゴーグル・防護衣を身に着けて、消毒も徹底するので、入院費も高額になってしまいます。症状の強さ、死亡率の高さ、入院期間を考えると、予防が1番であると言えます。
どのように予防をするの?
・フィラリアもマダニも1本で予防できるオールインワン製剤が主流
・予防期間は通年もしくは5月~12月
猫ちゃんのフィラリアとマダニ・ノミ予防は、1つですべて予防できるオールインワン製剤があります。1ヵ月に1回、背中に垂らすスポットタイプなので、飲み薬が苦手な猫ちゃんも簡単に予防ができます!
予防期間に関しては、フィラリアはアメリカではワンちゃん同様猫ちゃんも通年予防を推奨しています。また、マダニは冬でもSFTSの報告があるので、こちらも通年予防が理想的です。ただ最初から通年は悩まれると思いますので、多くのワンちゃんと同じように、まずは、5月~12月の8カ月予防をされてみてはいかがでしょうか?
費用:1本(1カ月) 1500円~1800円(体重により変わります。)
まとめ
猫ちゃんのフィラリアとマダニ予防がなぜ大切かまとめました。実際はワンちゃんに比べると猫ちゃんの予防は少ない状態です。しかし最近では、特にマダニが関係するSFTSがメディアでも取り上げられ、予防に興味を示される猫ちゃんの飼い主さんも多くなってきました。ウイルス検査ができる検査センターが増えたり、獣医師も意識するようになった結果、報告数が増えてきています。
フィラリア症は、ワンちゃんに比べると診断が難しいところがありますが、関東での報告も出ています。
今回取り上げた病気の最大の治療は予防になります。苦しむ猫ちゃんがいなくなるようにこれからも予防の大切さをお伝えし続けたいと思います。予防についてご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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