こんにちは。西葛西の森のどうぶつクリニック、院長の森です。暖かくなってきたり、日が長くなってきたりと、春を感じることが増えてきましたね。先日おしらせで春のキャンペーンについて投稿しましが、ご覧いただけましたでしょうか?フィラリアやノミ・マダニは予防がとても大事なので、飲み忘れに注意してくださいね!お得に飲み忘れも防げるようにまとめ買いでの割引を行っているのでチェックしてください。
今回はフィラリア症についてまとめました。犬さんについては皆様が予防をしているおかげで遭遇する機会が少なくなりましたが、都内でも飼い主様がお忙しくて1年予防を忘れてしまい、翌年感染を認めた子の経験があります。また、猫さんのフィラリア症に関してはあまり知られていないことが多いので、参考になれば幸いです。
前半で犬のフィラリア症、後半で猫のフィラリア症についてまとめてあります。
犬のフィラリア症について
犬のフィラリア症(犬糸状虫症:いぬしじょうちゅうしょう)は蚊が媒介する「フィラリア」という寄生虫が肺の血管(肺動脈)や心臓に寄生する病気です。放置していると命にかかわる重大な疾患であり、また治療にも時間がかかるため、予防がとても重要になります。
1.感染のメカニズム
・感染した犬の血液を吸血時に第1期幼虫(ミクロフィラリア)を吸引 ←重要
↓
・蚊の体内で第2、第3期幼虫(感染幼虫)へと成長
↓
・他の犬を吸血時に第3期幼虫が体内へ
↓
・犬の体内で第4、第5期幼虫に成長して、心臓へ ←フィラリア予防薬は主に第4期幼虫に効果があります。
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・成虫となり、第1期幼虫(ミクロフィラリア)を産出
フィラリアが成虫になるには蚊と犬が必要です。感染した犬さんの血液を吸引し、別の犬さんにうつすことでフィラリア症は広がっていきます。蚊を無くすことはできませんので、予防薬が非常に重要になります。また、本人を守るだけではなく、地域の他の犬さんも守る事になります。フィラリア症に遭遇することは少なくなりましたが、ご家族の努力の賜物だと思っています。
また、「フィラリア予防薬は、蚊がいなくなってから1ヵ月後まで飲むのが重要」とされています。犬さんにまず入ってくるのは第3幼虫ですが、フィラリア予防薬は主に第4期幼虫に効果があるとされているのが、その理由です。
2.主な症状
初期段階ではほとんど症状が出ませんが、寄生する数が増えてくると循環器や呼吸器の症状が現れます。
〇慢性糸状虫症
・乾いた咳をする
・散歩を嫌がる、疲れやすくなる
・食欲がなくなる、瘦せてくる
・お腹がふくれる
〇急性糸状虫症(大静脈症候群)
上記の他に
・呼吸困難
・尿が赤くなる
通常病気の進行は緩やかですが、フィラリアが突如として、肺動脈という血管から、心臓に移動すると全身状態の急激な悪化を引き起こします。これを急性糸状虫症や大静脈症候群と呼びます。症状は、慢性糸状虫症に見られるものに加えて、肺炎による呼吸困難や赤色など尿の色の変化が見られます。数日以内に死に至る可能性もあるため非常に危険な状態です。
3.診断方法
・フィラリア成虫抗原検査:血液中のフィラリア雌成虫の成分を検出します
・ミクロフィラリアの検出:血液中の第1期幼虫を検出します
犬の場合、多く寄生するため成虫もしくはミクロフィラリアを検出しやすく、診断が比較的容易です。感染を確認した後、レントゲン検査や心臓の超音波検査(エコー検査)を実施します。
4.治療
感染するとお薬の長期的な服用や、外科的な処置が必要になるので予防がとても重要になります。
・内科療法
:フィラリアが生きていくために、ボルバキアという菌が必要ですが抗菌薬を服用することでその菌を駆除することで、フィラリアも死滅させていきます。従来の治療より安全性は高まりましたが、長期的な治療が必要となります。
・外科的処置
:内科治療は時間がかかるため、急性症状を呈している際には外科的に虫体を取り除く必要があります。外科的な処置を考えるときはすでに動物の状態も悪く、その上全身麻酔をかけるので非常に危険性を伴うものになります。
5.さいごに
結論としては、しっかり予防しましょう!ということです。予防薬を服用することでほぼ感染を予防できます。フィラリア症はたしかに見かけなくなりましたが、それは飼い主様がしっかり予防をしてきた結果です。もし万が一感染してしまった場合、命にかかわる場合があったり、長期的な治療が必要な場合もあります。また、フィラリア症は蚊だけでは成立しない病気で、感染してしまうと周りのワンちゃんや猫ちゃん達にも広げてしまう可能性があります。月1回の予防薬で確実に予防していきましょう。
予防時期は基本的には5月~12月になります。それまでにフィラリア検査にお越しください。また、狂犬病ワクチン接種も同日に可能ですので、ハガキもご持参ください。
実は猫ちゃんにも危ない「猫のフィラリア症」について
「フィラリア症は犬の病気でしょ?」と思われる方も多いと思いますが、フィラリアは猫さんにも感染します。猫のフィラリア症は犬に比べて寄生するフィラリアの数が少なく診断が難しく、また、少数寄生でも重症化や突然死のリスクがある非常に注意が必要な病気です。
1.感染メカニズム
・感染した犬の血液を吸血時に第1期幼虫(ミクロフィラリア)を吸引
↓
・蚊の体内で第2、第3期幼虫(感染幼虫)へと成長
↓
・猫を吸血時に第3期幼虫が体内へ
↓
・猫の体内で第4、第5期幼虫に成長して、心臓(肺動脈)へ ←大部分の未成熟虫は死滅する
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・生き残った少数が成虫となるが、ミクロフィラリアの産出はまれ ←猫自体は感染源にはならない
基本的な感染の流れは犬さんと変わりません。ただ猫さんに特徴的なのは、フィラリアに耐性を持っているため、体内に入ってきても大部分は死滅し、成虫まで成長できるものは非常に少ないと言われています。これが犬さんと比べて、診断を難しくしている要因となっています。ただ、少数寄生であっても、「大部分の未成熟虫が死滅するとき」と「成虫の死滅時」に、咳や呼吸困難といった呼吸器症状、嘔吐などが見られ、重篤な場合は突然死につながると言われています。
2.主な症状
主に急性呼吸器障害が強く現れ、2つの病期に分かれます。
・第1病期(犬糸状虫随伴呼吸症候群:HARD)
第1期は、体内に入ってフィラリアが成長し、心臓と肺をつなぐ、肺動脈に到達した際、未成熟虫体あるいは免疫により死滅した虫体に対して急性炎症反応が生じた時に咳、呼吸困難、嘔吐が生じます。これは猫ちゃんに特有な反応です。
・第2病期
第2期は、生き残った成虫が死滅するときに、再び重篤な炎症が生じ呼吸器症状が現れるようになります。この時に血管に血栓が詰まり突然死につながるとされています。
第2期の後は、慢性期に入ります。その時には肺の構造が変わってしまっていて、他の子に比べて呼吸が荒い・深いように見られるようになります。
3.診断
前述したとおり、診断が猫のフィラリア症の最も難しいところになります。「感染をしているのに、検査で陽性とならない」ことがあり、この病気を疑う場合、複数の検査を繰り返し実施する必要があります。
・胸部X線検査
・心臓超音波検査
・抗体検査
・抗原検査 ←犬でまず最初にやられる検査です
4.治療
猫さんのフィラリア症の治療目標は症状のコントロール(緩和治療)です。
・内科療法:抗炎症薬、気管支拡張剤など
・酸素吸入
・静脈内輸液
・体温管理
犬さんでよく行われる薬物による成虫駆除は推奨されていません。その理由は上記の第2期の症状で示した肺血栓塞栓症などが起こる可能性があるためです。また、外科的な摘出は有効性はあるとされますが、少数寄生ということもなり摘出が困難なため実際には行われないことがほとんどです。
さいごに
猫のフィラリア症についてまとめてきました。結論としては、わんちゃんと同じで、予防がとても重要ということです。特に猫喘息など、呼吸器症状がみられたことがある子にはとても重要だと考えています。フィラリア症だけでも肺の構造が大きく変化して、息をたくさん吸わないと酸素が足りなくなってしまう状態になってしまいます。その状態で他の疾患が併発していると非常に辛いのではないかと思います。他の疾患の予防はなかなか難しいですが、フィラリア症の予防は可能です。ワンちゃんと同じように5月~12月の間、月1回予防薬使用します。猫ちゃんの場合は、飲み薬ではなく、背中に垂らすスポットタイプが主流です。飲み薬が苦手な子でも予防可能ですので、ご興味がある方は、ご相談ください。
