こんばんは。西葛西の森のどうぶつクリニック、院長の森です。最近暑い日が多くなってきましたね。熱中症には十分気を付けてお過ごしください。近々熱中症に関するお話も書いていこうと思います。
さて、最近、猫さんの嘔吐に関するご相談が立て続けにきました。共通しているのは「昔から時々吐いていたが、元気と食欲はあったので様子を見ていた。」もしくは「動物病院で検査をしたけど異常が無いから経過観察になっていた」というものでした。猫さんは毛玉を吐いたり、また食道の運動性が悪く食後すぐに吐いてしまったりしまうこともあり、様子を見ることも多いとは思います。しかし、猫さんの場合、フードを変更することで劇的に吐く頻度が減るケースがとても多いです。今回は猫の慢性腸症と原因となる慢性炎症性腸症の食事反応性についてまとめたいと思います。
慢性腸症と慢性炎症性腸症
冒頭部分の最後でいきなり聞きなれない用語が2つ出てきましたので最初に用語の説明をします。
〇慢性腸症:3週間以上嘔吐や下痢などの消化器症状が続く状態を指します。原因として慢性炎症性腸症や小細胞性リンパ腫などが挙げられます。
〇慢性炎症性腸症:胃腸の粘膜に特発性(原因不明)の炎症により、消化器症状を引き起こします。治療の反応性により下記の4つに分けられます。
・食事反応性:特定の療法食により症状が改善するもの。
・抗菌薬(腸内細菌叢調節)反応性:特定の抗菌薬、もしくはプロバイオティクスや繊維増強療法食により改善するもの。
・ステロイド(免疫抑制薬)反応性:ステロイド剤や他の免疫抑制薬により改善するもの。
・無反応性:上記治療に反応しないもの。
※猫さんでは抗菌薬反応性の論文報告はほとんどありませんが、日本の消化器を専門にしている先生は稀ですが経験されるとのことで記載しています。
慢性炎症性腸症の診断
慢性炎症性腸症の診断は主に「他の病気ではない」ということを検査で調べます。血液検査、ホルモン検査、レントゲン検査、超音波検査で大きな異常がない場合、経過観察では無く、次にお話しする治療トライアルを始めます。
〇主な検査
・血液検査:肝臓、腎臓、膵臓など消化器以外の異常が無いか調べます。
・甲状腺ホルモン検査:中年齢以降で慢性的な消化器症状がある子は甲状腺機能亢進症の可能性があります。
・レントゲン検査:巨大食道、横隔膜のヘルニア、腫瘤などを見ます。
・超音波検査:消化器の病気で非常に重要な検査です。
・細胞診:超音波検査で腫瘍を疑う場合、針を刺してできものを構成している細胞を採取します。
・病理組織検査:治療の反応性が悪い場合、内視鏡もしくは開腹手術で消化管の組織を採取し診断を試みます。
慢性炎症性腸症の治療トライアル
慢性炎症性腸症は検査により、〇〇性と判断できません。例えば、一番診断精度の高い病理組織検査であっても、どれも同じ「腸炎」と診断されます。そのため、まずは食事、抗菌薬、ステロイド剤をそれぞれ使用し、その反応を見て診断します。
〇治療の流れ
・特定の療法食に変更
:3種類くらいのフードを試します。1種類につき2週間使用して、消化器症状が改善するかを確認します。食事変更により症状が改善すれば「食事反応性」と診断します。
↓ 療法食に変更しても症状が改善しない場合次のステップに進みます
・特定の抗菌薬を使用+腸活など
:特定の抗菌薬を2週間程度使用し、消化器症状が改善すれば「抗菌薬反応性」と診断します。
↓ 抗菌薬にも反応しない場合は次のステップに進みます
・ステロイド剤を使用
:ステロイド剤もしくは免疫抑制剤を2週間程度使用し、消化器症状が改善すれば「ステロイド(免疫抑制剤)反応性」と診断します。
猫さんの50~60%が食事反応性なので、まずは食事から始めていきます。猫さんの嘔吐の場合はより反応がいいと感じていますので、療法食への変更はお勧めできます。
もし食事に反応しない場合は流れとしては抗菌薬の使用ですが、どちらかというと下痢がメインの子に使用しますので、嘔吐がメインの子はとばすこともあります。また、その次はステロイド剤の使用になりますが、この時点で内視鏡検査と病理組織検査も勧められます。先にステロイド剤を使用するか、あるいは、内視鏡検査を行うか、メリットとデメリットをお話し方向性を決めていきます。
さいごに
今回は猫さんで多い、慢性炎症性腸症の食事反応性についてまとめました。猫さんはよく嘔吐する動物と認識されているため様子を見られることも多いですが、もしかするとその嘔吐は改善できるかもしれません。もし嘔吐にお困りの場合は、1度ご相談ください。特に週1回以上吐くようであれば、元気食欲があっても食事変更から治療を始めることをお勧めします。
西葛西の動物病院
森のどうぶつクリニック
